コミティア100で出会った本たち(その1)
2012-05-11
久々にコミティアで手に入れた本のうち、特に印象に残ったものについて書きます。その1とありますが、何回続くかは未定です(えー)。今回は
・『枝分かれの国』(サブマリンサンドイッチさん)
・『ESPOSITAS』(かもかすてらさん)
・『こんにちは!ベビーちゃん 恋するウサギ003』(モチウサギさん)
の3冊です。どれもコミティア100の新刊です。
◎『枝分かれの国』(サブマリンサンドイッチさん)

ここ最近のコミティアでは30ページ前後の漫画を新刊として出されているサブマリンサンドイッチの上野さん。
今回は本編36ページ、なかなかの力作で楽しませていただきました。
主人公・トオルが住む現実の世界と、トオルが遊ぶRPGゲームの世界(中世ヨーロッパの趣き。竜や魔法が存在する)、このふたつの混じり合い方が実に上手ですし、終盤、大人たちのプレッシャーに押しつぶされそうになる少年(たち)をトオルが救うというお話は感動ものでした。
終盤明かされる二つの世界、及びそこで暮らす悩みを抱えた少年(たち)の関係には思わずうならされ、この作品の奥行きの深さを感じました。
ここで「少年(たち)」と書いたのには理由がありまして。
ネタバレになりますが、簡単に言えば、二つの世界の悩みを抱えた少年(たち)とは、実は同一人物だからです。
現実の世界では、トオルのクラスメートであるサカキという少年が登場し、ゲームの世界ではサカキによく似た顔立ちの王子が登場します。
現実の世界では、サカキが進路の事で周囲からプレッシャーをかけられ、ゲームの世界では魔力の無い事を気にする王子が、周りの人たちからさげすまれたりして悩んでいました。
物語後半、サカキは学校を休み、それ以降トオルがいる世界は現実の世界とゲームの世界がリンクした世界となります。
二つの世界がリンクした世界でトオルが見つけた王子に、トオルが「この世界のサカキは ゲーム中の王子が 作り出した もう一人の王子?」と思う場面があります。
このトオルのモノローグから、サカキと王子は同一人物と見てよいと私は思ったのでした。
同一人物である一方、二つの世界でそれぞれ名前も素性も異なるため、単に「少年」とも「少年たち」とも書くことにやや抵抗があったので、あいまいな形になりますが「少年(たち)」と表記しました。
再び感想に戻ります。
ゲームの世界の王子は魔法が使えないため、周りからさげすまれていました。
その苦しみから逃れようと、毎日書庫に忍び込んで読んだ本の中に、ちょうど現実の世界のトオルたちのような「自由な世界」を目にした王子は、その世界に行けたらと強く願うようになります。
ここでの王子がサカキとなる場面を描いた絵は、幻想的でもあり、迫力もあります。
そしてこれは深読みかもしれませんが、「魔法のひとつも使えない」と言われていた王子が魔法を使った瞬間でもあるように思います。強い願いが生んだ奇跡、でしょうか……。
さて、願いが叶った王子でしたが、現実では進路の問題でやはりプレッシャーに苦しむ事に……。
「何かでいなくちゃいけないんだ」という思いを拭い去れないサカキと王子。
そうした彼の苦しみを救ったのは、トオルの「僕は友達だよ」という言葉。
とてもシンプルな言葉ですが、トオルが王子(サカキ)にこの言葉を言う場面、及びその直後の開放感を表す展開(絵とモノローグ)には感動しました。
大人(周囲の人々)がかけてくる勝手なプレッシャーに負けそうになっても、それを救ってくれる人がいる。
そして、人とは違う何者かであろうとする焦りを無くしてくれる人がいる。
こういう人がいてくれたら、それはとても幸せな事ではないでしょうか。
現実の世界とゲームの世界を違和感無く混じり合わせたことと、トオルが王子(サカキ)を救う場面に至るまでのお話の運び方の巧みさと、質の高い良い作品だと思いました。
最後に表紙のイラストについても感想を。
表紙イラストではトオルのほかに竜、妖精、マントを身につけたウサギに本と、ゲームの世界の要素がちりばめられていて、いい雰囲気を漂わせていますが、個人的にはそれらに加えて傘や花などで使われている深みのある青い色にも目を奪われました。
コミティア当日に原画も見せていただきましたが、本よりも更に(全体的に)鮮やかかつ深みのある色で、それはとても素晴らしかったものです。いいものを見せていただきました……!
◎『ESPOSITAS』(かもかすてらさん)

新婚奥様ぽさこさんシリーズの初期作品3作をまとめた再録本。
通して読み返すことで、何気なくて見過ごしてしまいそうな日常の出来事を拾い上げ、魅せるセンスを持った作品だと改めて感じました。
(1作目はぽさこさんとだんなさまの初めての出会いをつづったプレビュー版的なものなのでちょっと違いますが……。ですが既に読者の心に染み入るモノローグのセンスを確かめる事ができます。)
例えば2作目なら、ぽさこさんが晩ご飯の支度をしながらだんなさまが早く帰ってこないかなとか、今日も一日おつかれさまなどと思う場面です。私としてはこの場面が特にグッと来ます。新婚さんだからこそ、でしょうか。
3作目は、ぽさこさんがだんなさまには内緒(?)で記念日を祝おうとするテーマ自体にグッと来ました。
それにしても、ぽさこさんはちゃんとだんなさまの誕生日を覚えていて、それを記念日と思っているのに、当のだんなさまはぽさこさんにプロポーズした日と思っていて、こうした二人のすれ違いも微笑ましさを生んでいますね。
そして描き下ろしでは、ぽさこさんとだんなさまが出会って程ないと思われるころから、今の二人に続くお話。
昔の事を夢に見ただんなさま、ぽさこさんが作っているホットケーキに、にんじんが入っているのを確かめてからの二人のやり取りが印象的でした。
「ぽさは変わんないなぁ…」と言うだんなさまに対して、「これから変わっていくかもしれませんよ?」と答えるぽさこさん。
ぽさこさんの言葉には何か意味深なものを感じてしまいました。
あと1作目から3作目までには4コマ漫画も入っていますが、どれも微笑ましいものばかりで好きです。
特に好きなのは、2作目の柔軟剤に関するお話。
CMで柔軟剤仕上げの「もふもふ」に憧れるぽさこさん、さっそく使って帰宅しただんなさまに洗濯物を差し出して「おかえりなさいの もふ!!」と言う場面とセリフがツボです。大いに和みました(笑)。
◎『こんにちは!ベビーちゃん 恋するウサギ003』(モチウサギさん)

「ポヤポヤ乙女系男子と年中発情ウサギお姉さんのお話」(前書きより)3作目。しかし「年中発情ウサギお姉さん」ってすごいですね(笑)。
ポヤポヤ乙女系男子・千春くんことハニーちゃん、ある日突然3人の人型ウサギの子供たちの父親になってしまってさあ大変。
なんでもハニーちゃんが飼っている人型ウサギのツユクサちゃん、ハニーちゃんの子供が欲しいと強く妄想していたらそれが実体化したという……。
ツユクサちゃんも飼い主のハニーちゃんと結ばれるために、月の呪力をアレコレして人型になったといいますから、ハニーちゃん、実はかなりすごいウサギなのでは?(笑)
最初は当然戸惑うハニーちゃんですが、3人の子供たち(千夏、千明、千歳)との暮らしにも慣れ、ツユクサちゃんの良き母親ぶりもうかがい知る事ができ、幸せな日々を過ごす……はずでしたが、ここで時点は急展開。
ツユクサちゃんも驚く(笑)ウサ女神様が現れ、さすがにツユクサちゃんのしたことはやり過ぎということで3人の子供たちをつれてゆく事になってしまいます。
この場面には切なくなりましたね……。
今までのシリーズでは、主にツユクサちゃんのハニーちゃんに対する暴走気味の妄想による笑いがメインだっただけに、こうした重めのお話が描かれた事が新鮮でした。
今回はツユクサちゃんの暴走も無いまま終わるのかなと思っていたら、本編後にいつものツユクサちゃん(ハニーちゃんに無理やり交尾を迫るw)が出てきたので安心しました(笑)。ハニーちゃん、気をつけてー!(笑)

ここ最近のコミティアでは30ページ前後の漫画を新刊として出されているサブマリンサンドイッチの上野さん。
今回は本編36ページ、なかなかの力作で楽しませていただきました。
主人公・トオルが住む現実の世界と、トオルが遊ぶRPGゲームの世界(中世ヨーロッパの趣き。竜や魔法が存在する)、このふたつの混じり合い方が実に上手ですし、終盤、大人たちのプレッシャーに押しつぶされそうになる少年(たち)をトオルが救うというお話は感動ものでした。
終盤明かされる二つの世界、及びそこで暮らす悩みを抱えた少年(たち)の関係には思わずうならされ、この作品の奥行きの深さを感じました。
ここで「少年(たち)」と書いたのには理由がありまして。
ネタバレになりますが、簡単に言えば、二つの世界の悩みを抱えた少年(たち)とは、実は同一人物だからです。
現実の世界では、トオルのクラスメートであるサカキという少年が登場し、ゲームの世界ではサカキによく似た顔立ちの王子が登場します。
現実の世界では、サカキが進路の事で周囲からプレッシャーをかけられ、ゲームの世界では魔力の無い事を気にする王子が、周りの人たちからさげすまれたりして悩んでいました。
物語後半、サカキは学校を休み、それ以降トオルがいる世界は現実の世界とゲームの世界がリンクした世界となります。
二つの世界がリンクした世界でトオルが見つけた王子に、トオルが「この世界のサカキは ゲーム中の王子が 作り出した もう一人の王子?」と思う場面があります。
このトオルのモノローグから、サカキと王子は同一人物と見てよいと私は思ったのでした。
同一人物である一方、二つの世界でそれぞれ名前も素性も異なるため、単に「少年」とも「少年たち」とも書くことにやや抵抗があったので、あいまいな形になりますが「少年(たち)」と表記しました。
再び感想に戻ります。
ゲームの世界の王子は魔法が使えないため、周りからさげすまれていました。
その苦しみから逃れようと、毎日書庫に忍び込んで読んだ本の中に、ちょうど現実の世界のトオルたちのような「自由な世界」を目にした王子は、その世界に行けたらと強く願うようになります。
ここでの王子がサカキとなる場面を描いた絵は、幻想的でもあり、迫力もあります。
そしてこれは深読みかもしれませんが、「魔法のひとつも使えない」と言われていた王子が魔法を使った瞬間でもあるように思います。強い願いが生んだ奇跡、でしょうか……。
さて、願いが叶った王子でしたが、現実では進路の問題でやはりプレッシャーに苦しむ事に……。
「何かでいなくちゃいけないんだ」という思いを拭い去れないサカキと王子。
そうした彼の苦しみを救ったのは、トオルの「僕は友達だよ」という言葉。
とてもシンプルな言葉ですが、トオルが王子(サカキ)にこの言葉を言う場面、及びその直後の開放感を表す展開(絵とモノローグ)には感動しました。
大人(周囲の人々)がかけてくる勝手なプレッシャーに負けそうになっても、それを救ってくれる人がいる。
そして、人とは違う何者かであろうとする焦りを無くしてくれる人がいる。
こういう人がいてくれたら、それはとても幸せな事ではないでしょうか。
現実の世界とゲームの世界を違和感無く混じり合わせたことと、トオルが王子(サカキ)を救う場面に至るまでのお話の運び方の巧みさと、質の高い良い作品だと思いました。
最後に表紙のイラストについても感想を。
表紙イラストではトオルのほかに竜、妖精、マントを身につけたウサギに本と、ゲームの世界の要素がちりばめられていて、いい雰囲気を漂わせていますが、個人的にはそれらに加えて傘や花などで使われている深みのある青い色にも目を奪われました。
コミティア当日に原画も見せていただきましたが、本よりも更に(全体的に)鮮やかかつ深みのある色で、それはとても素晴らしかったものです。いいものを見せていただきました……!
◎『ESPOSITAS』(かもかすてらさん)

新婚奥様ぽさこさんシリーズの初期作品3作をまとめた再録本。
通して読み返すことで、何気なくて見過ごしてしまいそうな日常の出来事を拾い上げ、魅せるセンスを持った作品だと改めて感じました。
(1作目はぽさこさんとだんなさまの初めての出会いをつづったプレビュー版的なものなのでちょっと違いますが……。ですが既に読者の心に染み入るモノローグのセンスを確かめる事ができます。)
例えば2作目なら、ぽさこさんが晩ご飯の支度をしながらだんなさまが早く帰ってこないかなとか、今日も一日おつかれさまなどと思う場面です。私としてはこの場面が特にグッと来ます。新婚さんだからこそ、でしょうか。
3作目は、ぽさこさんがだんなさまには内緒(?)で記念日を祝おうとするテーマ自体にグッと来ました。
それにしても、ぽさこさんはちゃんとだんなさまの誕生日を覚えていて、それを記念日と思っているのに、当のだんなさまはぽさこさんにプロポーズした日と思っていて、こうした二人のすれ違いも微笑ましさを生んでいますね。
そして描き下ろしでは、ぽさこさんとだんなさまが出会って程ないと思われるころから、今の二人に続くお話。
昔の事を夢に見ただんなさま、ぽさこさんが作っているホットケーキに、にんじんが入っているのを確かめてからの二人のやり取りが印象的でした。
「ぽさは変わんないなぁ…」と言うだんなさまに対して、「これから変わっていくかもしれませんよ?」と答えるぽさこさん。
ぽさこさんの言葉には何か意味深なものを感じてしまいました。
あと1作目から3作目までには4コマ漫画も入っていますが、どれも微笑ましいものばかりで好きです。
特に好きなのは、2作目の柔軟剤に関するお話。
CMで柔軟剤仕上げの「もふもふ」に憧れるぽさこさん、さっそく使って帰宅しただんなさまに洗濯物を差し出して「おかえりなさいの もふ!!」と言う場面とセリフがツボです。大いに和みました(笑)。
◎『こんにちは!ベビーちゃん 恋するウサギ003』(モチウサギさん)

「ポヤポヤ乙女系男子と年中発情ウサギお姉さんのお話」(前書きより)3作目。しかし「年中発情ウサギお姉さん」ってすごいですね(笑)。
ポヤポヤ乙女系男子・千春くんことハニーちゃん、ある日突然3人の人型ウサギの子供たちの父親になってしまってさあ大変。
なんでもハニーちゃんが飼っている人型ウサギのツユクサちゃん、ハニーちゃんの子供が欲しいと強く妄想していたらそれが実体化したという……。
ツユクサちゃんも飼い主のハニーちゃんと結ばれるために、月の呪力をアレコレして人型になったといいますから、ハニーちゃん、実はかなりすごいウサギなのでは?(笑)
最初は当然戸惑うハニーちゃんですが、3人の子供たち(千夏、千明、千歳)との暮らしにも慣れ、ツユクサちゃんの良き母親ぶりもうかがい知る事ができ、幸せな日々を過ごす……はずでしたが、ここで時点は急展開。
ツユクサちゃんも驚く(笑)ウサ女神様が現れ、さすがにツユクサちゃんのしたことはやり過ぎということで3人の子供たちをつれてゆく事になってしまいます。
この場面には切なくなりましたね……。
今までのシリーズでは、主にツユクサちゃんのハニーちゃんに対する暴走気味の妄想による笑いがメインだっただけに、こうした重めのお話が描かれた事が新鮮でした。
今回はツユクサちゃんの暴走も無いまま終わるのかなと思っていたら、本編後にいつものツユクサちゃん(ハニーちゃんに無理やり交尾を迫るw)が出てきたので安心しました(笑)。ハニーちゃん、気をつけてー!(笑)