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「あかつきの教室」1巻(板倉 梓:著、芳文社コミックス、芳文社)

 2011-04-18
あかつきの教室1巻

 小さな海辺の町の中学校で
 理科を教えている暁千夜子。
 どことなくミステリアスな彼女には
 奇妙な収集癖があった――。
(カバー裏より)

 
 現在『週刊漫画TIMES』(芳文社)にて不定期連載中の「あかつきの教室」。
 一話完結でつづられるため、どの回から読んでも楽しめます。
 ただ、最初から通して読んでおくとより味わい深く楽しめますし、読み返すことで気づくちょっとしたお楽しみ要素もあります(これらについては後ほど)。
 もちろんそうしたことを気にしなくても、何度も読んでしまう不思議な魅力を持った作品でもあります。

○何度も読ませる3つの魅力

 人によりこの作品の魅力となる要素は異なるのでしょうが、私の場合は
 ・毎回何かしらハッとさせられる台詞や場面があること
 ・各話の中におけるシリアスさと和みのバランスの良さ
 ・各話のメインキャラが抱える悩み・不安・わだかまりが、暁先生はじめその他の登場人物のおかげで、意識的にしろ無意識的にしろ解消されること。及びそれが生み出すあたたかさ

がこの作品の魅力だと思っています。
 7限目(第7話)のように、最初から最後まで緊張感が強くて苦い終わりの回もありますが……。

 それぞれの要素について、少し具体的に例を挙げてゆきます。

 まずは一つ目。
 いろいろある中、あえて一つだけ挙げるなら。
 4話目、進路と自分自身の実力に悩む陸上部の女の子・成田さんが、老いた数学教師・幾島先生のアドバイスのおかげで立ち直る一連の場面です。静かさと熱さを併せ持つこの場面は、とても前向きで爽やかで大好きな場面でもあります。
 もちろんこれ以外にも好きな、印象に残る場面はいろいろありますが、結局全部語ることになるのでここまで。

 そして二つ目。
 5話目と8話目が特に印象的ですが、5話目について触れてゆきます(8話目も良いんですよ……)。
 この回のメインキャラ、橋本先生の姪っ子・なつみが持病の喘息の発作を起こして落ち着いたあと、暁先生と二人きりで語り合う場面とその後の場面です。

 暁先生の手を握って「ちゃんと元気になりたいな お外でいろいろ見たいんだ」と話しかける場面に、いじらしさを感じたものです。
 それを受けての暁先生の「そうね」という言葉と海鳴りが鳴り響く場面は、小さいながらも確かな希望ときらめきを感じさせて感動的です。

 その後は一転してコミカルでほのぼのとした展開になりますが、これも実に好きです。
 はつみの明るさと、彼女の両親(橋本先生の妹夫婦)のキャラクターに寄る部分が大きいですね。
 妹夫婦は、おとなしい橋本先生とは正反対の、少し軽そうだけど明るいキャラクターですから。
 ラストで橋本先生が暁先生に片思いな事が家族みんなにバレる場面は、微笑ましくて大好きです。

 最後の三つ目。
 これも一つだけに絞りますと、3話目になります。もちろん他の回も印象的なので迷いました。
 この回では、橋本先生が幼い頃に見た不思議な出来事と、祖父の死の関係という謎とわだかまりが、暁先生の知識によって無事に解ける一方、人が人を好きになるという新たな謎を橋本先生が抱くことになります。

 不思議な出来事。それは空からたくさんの魚が降ってくるというものでした。
 それだけでも不思議なのですが、その翌日に祖父は心臓発作で急死します。
 両者に因果関係はあるのかと思い、魚が降ったことを誰にも言えないままの橋本先生。
 ですが暁先生が確証は無いと断った上で、その現象は世界中で報告されていると橋本先生に教えます。ただし祖父の死との因果関係にまでは触れていませんが、偶然だったということでしょうか。

 不思議な出来事と祖父の死に関しては一応の解決を見ますが、この時に暁先生がふとつぶやいた「死んじゃった人に会えたら嬉しいですよね」という言葉。
 これがきっかけとなったのか、橋本先生は彼自身が暁先生を好きなように「何で人は人を好きになるんだろう」という新たな謎を抱くことになります。
 こうした展開の上手さもあり、3話目も印象に残るお話です。

○通して読んだり、読み返すことで気づくお楽しみ

 最初にて「最初から通して読んでおくとより味わい深く楽しめますし、読み返すことで気づくちょっとしたお楽しみ要素もあります」と書きましたが、これらについて触れてみます。

 この「あかつきの教室」は一話読みきりとはいえ連載作品ですので、それぞれの回は緩やかなつながりを持っています。
 それを踏まえた上で暁先生と橋本先生について注目してゆくと、より味わい深く楽しめそうです。
 具体的には、暁先生が死体を集める理由(それは暁先生の過去が明らかになることともつながっていると思います)が少しずつ語られる場面だったり、同僚の国語教師・橋本先生が暁先生にアプローチすることで、距離を縮めてゆく様子だったりします。ただし第1巻ではほとんど進展はありませんけど(笑)。

 前者については、これを書いている時点でも明らかではありませんが、通して読むことで推測できる気がします。
 暁先生は、死体を「単なる物」とはみなしたくない出来事があったように思いますが、どうでしょうか。
 それは、暁先生が動物の死体を「あのコ」と呼んでいる事(1話目ではリュウグウノツカイの、2話目ではタヌキの死体)と、8話目で暁先生の亡くなった友達を「そのコ」と呼んでいる事がヒントになりそうです。
 後者については、進展に乏しいということで、今回は触れません(笑)。

 そしてこの作品、一通り読み終えてから新たに読み返すと「このキャラ、既にこの回で登場していたんだ!」と気づくことがあります。
 一番分かりやすいのは、4話目のメインキャラである成田さんと幾島先生。両者は3話目で姿を見せていたのですね。特に成田さんはちゃんと台詞もあります。幾島先生はモブとして姿を見せているだけですが……。
 あと確証はありませんが、1話目では次の回のメインキャラ・竹田くんと飼い犬の六郎、2話目では8話目のメインキャラ・北原さん(2話目のラストで星座早見表を抱えて泣いている女の子)も姿を見せていると思います。
 こうしてさり気なく、後にメインとなるキャラクターを登場させる方法に「やるなぁ」とうならさせました。

○さいごに

 7話目の衝撃的なお話、8話目(特に北原さんの独特の死生観や、暁先生に語る彼女の飼い猫が亡くなり、変わり行く肉体の様子の生々しさ)も強く印象に残ったので語りたいのですけどね。本当に長くなるのでここまでです。

 描き下ろしについても触れておきましょう。
 各話の終わりには、その回のメインキャラクターたちが描かれていますが、8話目の北原さんと美術部員のカットが面白くて好きです。愉快で元気なキャラなんですよね、北原さん。

 そして巻末に掲載されている8ページの短編、これがしみじみと読ませます。
 本作の舞台となる、暁先生が暮らす海辺の町ののどかさが存分に描かれてますね。
 ふと思いましたが、横長の4コマにより描かれるこの短編は、どことなく映画的でもあります。
 そして台詞は一切登場しませんので、サイレント映画の趣です。

 あとがきもとても味わい深くて好きです。
 作者の小さい頃の記憶が、この作品に大きな影響を与えているのをしみじみと実感しました。
 この作品がどこか素朴で、何かしらの淋しさが横たわっている気がするのは、そうした記憶によるものかなとも思います。
 ハッピーエンドではないお話もありますが、それでも、この作品の登場人物がみな穏やかで幸せな日々を送れたらと思いつつ、感想を終わることにします。


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