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『トランジスタティーセット~電気街路図~』第1巻(里好:著、芳文社:刊)

 2009-03-15
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 現在の秋葉原を舞台に、古くからあるもの(電子部品とか)と新しいもの(萌え文化)がバランスよく混ざり合う、過渡期ならではの良さを表現しようとしている作品。
 これが私がこの作品に対して感じる事です。
 とはいえ難しく気構える必要などなく、可愛らしかったりサービス精神あるキャラクターに惚れるもよし、書き込まれた背景に実際の秋葉原に想いを馳せるもよし、笑いをベースに時折しんみりするお話を楽しむのもよしだったりします。それ自体充分すごいのですけどね。

○思わず秋葉原を訪れたくなったり

 本作は、現在の秋葉原を舞台にしながらも、オリジナルのお店や商店街が登場します。
 それにより、本当にありそうでどこにもない世界という心地良いもどかしさを感じさせています。
 もっとも、現実には作中の商店街に近い雰囲気の場所ならあるのですけど、そのものズバリではありませんし……(作者いわく「秋葉原ガード下の電波会館とか、アキハバラデパートとか、香港とか…いろいろまぜこんであります」とのことです。単行本カバーの背景についてですが。「里好的BBS」より引用)。

 この作品を読んでいると、舞台となった場所が急に気になってしまうのですが、そうさせるのも背景描写の素晴らしさにあるからだと思います。
 とにかく描き込み具合がすごいです。単にリアル志向という言葉では済ませられないプラスアルファが感じられ、それが自分を魅了するのかもしれません。
 そのプラスアルファとは、後書きを読んでわかったのですが、作者が秋葉原という場所に愛着があるからこそ生まれるものでした。
 後書きはわずか2ページですが、それでも存分に作者の秋葉原に対する愛着を感じる事ができます。本編と同じくらいに読み応えがあるほどに。

 私事で恐縮ですが、たまに秋葉原を訪れる事があるので、作中の背景を見ると「あ、この背景見たことある」となぜか嬉しくなってしまいます。別にそこに住んでいるわけでもないし、なじみがあるわけでも無いのですけど。
 雑誌で掲載されるたびにそんな感じだったのですが、この1巻にも収録されている第6話と第7話(万世橋を舞台にしたお話)を読んで、それまでたいして気にも留めていなかった萬世橋と元萬世橋駅(交通博物館跡地)が急に気になってしまったものです。
 実際に萬世橋近辺を訪れる事ができたのは少し時間が経ってからでしたが、その日は幸いに小春日和でしたので、存分に作品の舞台となった場所を堪能する事ができたのでした。
 写真もあれこれ撮ったのですが、悲しいかな後で見たら、その時の何ともいえない光の加減や空気感がまるで感じられず……。ま、別にカメラマンではないから仕方ないか! と思いながらもその日はふて寝したのでしたが。

○キャラクターについて

 この作品を好きな理由は他にもあります。
 登場人物が揃いもそろっていろんな意味で魅力的です。
 決してサービスシーンに心惹かれたわけでは無いですよ。
 第5話冒頭でのあんな姿でのあんなシーンとかに(説得力無いな)。

 主人公の半田すずは、高校生ながらもお店を切り盛りする女の子。
 外見は結構いい方なのに、おしゃれよりも電子(電気)工作に興味津々なのが惜しまれます(笑)。

 そんなすずを慕っているのが、須田さいりという小学生の女の子。
 慕っているとはいえそれを表に出す事はなく、いつもつっけどんな口調だったりします。
 いわゆるツンデレタイプで素直ではないのですが、それがまた可愛らしかったりします。
 (このあと紹介する)みどりを敵視していたみたいです。今は小康状態ですが。

 このふたりをメインにお話が続くのかと思われたら、そこに現れたのが、木場みどりという女の子。
 幼い頃すずと一緒に住んでいた事もあったり、親の都合で海外に住んでいたのですが、帰国したらメイド服姿に身を包んでいたのでした(笑)。
 さらにはすずの店の前にメイド喫茶を開店し、自分が店長兼メイドさんとして働くというパワフルな面もあったりします。
 もっとも、肝心の料理の腕前は壊滅的なまでに低いのですが。食べた人に強烈なダメージを与えるほどのサンドイッチを作るほどですから。

 朝すずを起こすために、下着姿で体を寄せるという積極性もあったり。サービス良過ぎです(笑)。

 普段はほんわりマイペースなのですが、第5話終盤では雰囲気がガラッと変わり、険しい表情を見せたのが印象的でした。
 店にやってきた外国の女性との会話から、何か隠されたものを感じましたが……。

 この3人を基本に、時々さいりの親友・大代鏡も登場。
 おとなしくてさいりに振り回されがちなのが不憫ですけど……(笑)。可愛らしくて料理も得意という点でもポイント高いです。

 今後も登場するかは不明ですが、謎のパーツ調達人・鄭さん(どう見ても女性なのに性別不明って……笑。国籍も不明です。チャイナ服着ているのにw)、万世橋を舞台にした太平洋戦争中の悲しい恋物語を語った近藤さん(と彼に一目ぼれした二十歳の女性)も存在感があり、この作品世界の厚みを増しています。
 さいりの祖父でもある商店街の店長さんもちょくちょく出てきますが、今のところ重要な役割ではないので特に触れません(酷いw)。

 あと個人的に外せないキャラが、若き日の近藤さんの恋人だった雪子さん。
 黒髪ロングストレートでセーラー服といういでたちは、清楚そのもの。惚れました。
 そんな彼女によく似た面影のお孫さんも登場するのですが、そのあたりは読んでのお楽しみということで。

○変わりゆくものへの思い

 はじめに書いたように、深く考えず気楽に楽しめるこの作品ですが、実は少し哲学的というか、深いものも感じられる時もあるのであなどれません。
 端的に言えば、変わり行く物事にどう向き合うか、ということです。

 すずは昔ながらの秋葉原に愛着があり、今は斜陽となりつつある自分たちの商店街を再び盛り立てようとしています。
 ですが今の秋葉原を代表する萌えを否定しているわけではなく、実際みどりがメイド喫茶を開いた事には反対していません。
 ちなみにさいりは、みどりが開いたメイド喫茶に強硬に反対したのですが、萌え文化を否定しているからというよりは、自分が好きなすずをみどりに取られるのが嫌だから、という思惑があったからみたいですけど。

 みどりは今の秋葉原に象徴されるメイドの格好をして、すずのお店の前でメイド喫茶を開いています。
 彼女もすずたちのお店がある商店街が好きなので、人を集めるためにメイド喫茶を開いたことを述べていますから(第4話より)、すずが愛着を持つ昔ながらの秋葉原を否定しているわけではないみたいです。

 こうして見ると、昔の秋葉原に愛着を持ち変わり行く時の流れに抵抗しながらも、変化をまったく受け入れなくはない「消極的現状肯定派」ともいえるすずと、商店街を盛り上げるためにメイド喫茶を開いた「積極的現状肯定派」のみどり、という図式も見えてくるのが面白いです。

 他にも、第7話では、昔の恋物語を聞かせる商店街の古老・近藤さんが「方丈記」の一節を出して、この世のありとあらゆるものは移り行く運命にあることを述べています。
 彼が話した内容からすると、この世のはかなさを意味していると思っていたのですが、最後にはそうではないことを読者は知る事になります。
 その言葉が実に読んでいて心に染みるのですよ。本当に。変わることは悪いことばかりではないのです。

 変わり行くこの世の流れに対して、好ましくないからと抵抗するか、新しい出会いを期待するか……。
 登場人物の思惑はさまざまですが、みんなが納得できる形での共存はやってくるのでしょうか。

 もしかしたら、この作品は作者の理想の秋葉原を描くために生まれたもの、と考えてしまいます。
 後書きでは、今の秋葉原のいい意味で混沌とした様子を愛おしむ気持ちが語られています。
 再開発が進み、昔からある建物がいずれは消えてしまうかもしれない。
 その寂しさを拭い去ろうと、この作品に理想の秋葉原の景色を閉じ込めようとしているのでは……。
 そう考えるのはちょっと感傷が過ぎるでしょうか。

 その点でも、私はこの作品を最後まで見届けたいのです。
 現実の秋葉原がどうなってゆくのか、という思いもありますが……。
 物事は、移り変わるちょうど真ん中が一番面白いのかもしれません。 

『トランジスタティーセット~電気街路図~』第1巻 里好:著 芳文社:刊(まんがタイムKRコミックス)

○作品紹介ページ。試し読みもできます。(まんがタイムきららWeb)
http://www.dokidokivisual.com/comics/book/index.php?cid=282
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